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2012年12月号 飛蚊症と鍼灸治療

飛蚊症飛蚊症とは、明るいところや白い布、壁、青空などを見たときに、眼の前に黒い点や糸屑などの浮遊物が飛んでいるように見える症状である。視線を動かしても、なお一緒に移動してくるように見え、眼の表面についた「眼やに」でもなく、まばたきをしても、眼をこすっても消えてなくならない。しかし、暗いところでは、あまり気にならない。
このような症状を医学的には、飛蚊症(ひぶんしょう)とよんでいる。その正体は眼球の中にある。

眼球内の中心の大部分は、硝子体とよばれるゼリー状の透明な物質がつまっている。外から眼に入った光は、この硝子体を通過して網膜まで達する。ところが、硝子体に何らかの原因で濁りが生じると、明るいところを見たときにその濁りの影が網膜に映り、眼球の動きとともにゆれ動き、あたかも虫や糸屑などの浮遊物が飛んでいるように見え、飛蚊症として自覚される。この濁りには、生理的な原因によるものと、網膜裂孔、網膜剥離、硝子体出血、硝子体剥離などの病理的な原因によるものとがある。
中国医学では、「目」は肝臓と密接な関係があると考えられている。その肝臓は、ストレスに影響されやすい臓器とされ、ストレスが原因で、体内の気血の流れが悪くなり停滞すると「肝気鬱滞(かんきうったい)」といって、肝臓に気血が停滞し、熱を生じる。この熱が肝臓と関係のある眼に悪い影響を及ぼす。眼の健康を脅かす最も危険な因子は熱である。足は温めると気持ち良いが、眼は逆に熱を嫌い、熱を持つと結膜炎や角膜炎などの炎症や、多くの眼科疾患を引き起こす。
飛蚊症は、西洋医学でもストレス、疲労、もしくは老化が原因とされている。中国医学でも上記のようにストレスを原因と考えており、鍼灸治療では、眼の周囲や眼と関連する肝臓の状態を改善する経(ツ)穴(ボ)に鍼治療を行う。この眼鍼療法を中心とした治療で飛蚊症に効果を上げている。しかし、病理的な原因による飛蚊症の場合には、西洋医学による眼科治療も併用する必要がある。

投稿者:tcm-editor

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